ロジャースは中盤の人選において"複数の最適解"を見出す必要がある

 現地時間9月23日、カラバオカップ3回戦アーセナルとの試合を前にある選手の負傷情報が入っていった。それはエンデディが負傷し、10月のナイジェリア代表には選ばれたものの、代表からは離脱するということであった。だがこの段階では詳細な情報は発表されず、治療期間も発表されることはなかった。

 

 そしてアーセナル戦後の会見において、ブレンダン・ロジャースがエンデディの負傷について言及した時には誰もが頭を抱える展開になった。それは鼠径部のケガにより最大12週間の離脱になるということであった。結局エンデディは手術が必要となり、約3か月の離脱が確定した。

 

 このケガは箇所は違えど、昨シーズンの1月から2月にかけて膝のケガによるエンデディの不在をフラッシュバックさせる人も多い。それは彼の不在により成績が急降下したという強いネガティブ要素が含まれている。

 

 ただ今シーズンは昨シーズンとは明確に違う要素が存在する。それは今シーズンエンデディがプレーしたリーグ戦2試合では本職の中盤ではなく、本職CBに怪我人などのチーム事情によりCBでプレーしたということだ。

 

 結果として昨シーズンと同じように中盤の底にエンデディ不在という課題に直面したレスターだが、ここまではナンパリス・メンディーとユーリ・ティーレマンスの2人が2ボランチとしてプレー。幸いにもこの2人が好調ということもあり、エンデディの穴は展開力、守備力双方の面でカバー出来ている。

 

 メンディーは今夏で契約満了により退団濃厚とされていたが、コロナウイルスによるクラブの財政難により契約延長を結んだ。プレーでは中盤のフィルター役だけでなく、前線へ展開するフィードも今シーズンは向上。今やチョードリーよりも序列は高く、欠かせない存在になっている。


 同様にティーレマンスはベルギー代表で慣れ親しんだ2ボランチで切れ味抜群のスルーパスを連発。バーンリー戦、マンチェスター・シティ戦の勝ち越しゴールは直前に彼のスルーパスから生まれている。

 

 だがいくらこの2人が好調であっても、この2人"だけ"では残念ながら10月後半から始まるヨーロッパリーグ(以下EL略)とプレミアリーグの両立は明らかに不可能である。

 

 ELのグループステージは10月22日に開幕を迎えると29日、11月5日と3週連続でELのゲームをこなすことになり、4節からも11月25日から12月9日まで3週連続でのゲーム。プレミアは日曜日又は月曜日開催になるので週2試合(中2日~中3日)のペースを3週間耐えなければならない。

 

 もしティーレマンスとメンディー以外のオプションを見出せなければ2人のパフォーマンスレベルは時期が経過するごとに低下の一途を辿っていくだろう。そしてメンディーの場合はレスターに加入以降昨シーズンまでの4シーズンの内、3シーズンはケガで戦線を離脱しているという事実を頭の片隅に置いておく必要がある。今シーズンの調子がどれだけ良くても、残念ながらこの事実は決して覆ることはない。

 

 つまり中盤の人選においてロジャースはメンディー&ティーレマンス以外のオプションを持たなければならない。これは少なくとも年内の間はこの課題に直面することになるだろう。

 メンディーとティーレマンス以外の候補としては現状ハムザ・チョードリーとデニス・プラートの2人になってくる。プラートはウェストブロム、バーンリーとの一戦では4-2-3-1のトップ下でスタメン出場をしたが、マディソンのコンディションが完全に整えば1列下がったポジションに回ることになるかもしれない。

 

 ただプラートはチームで唯一といっていいほど、ボックスの背後に走り込んでチャンスを生み出す選手である。今後数日による補強次第ということもあるが、プラートを一列下げたポジションで起用した場合はファイナルサードでの崩しの面で一定の損失を被ることになる。

 

 またチョードリーを起用する際には例えばティーレマンスなどの展開力に自信を持つプレーヤーとペアで組ませることが必須になってくるだろう。昨シーズンのエンデディ不在時にはアンカーのチョードリーの脇に、IHでプレーしていたティーレマンスやマディソンが頻繁に落ちてくるシーンが目撃されていた。これによりチョードリーの足元の脆さは一定程度カバー可能となる。

 

 加えてレスターユース出身のデュース・バリーホールの去就は移籍市場における「どのような選手を連れてくるか次第」とブレンダン・ロジャースは発言している。この答えは遅くともイングランドの国内移籍における閉幕日となる10月16日までには何らかの形で示されるだろう。仮に残留した場合には一定のプレー時間を与えることをロジャースは認めており、何かしらの形でプレーする姿を見ることになるはずだ。


 エンデディがケガをする前に話題となったエンデディを含めた中盤の起用法におけるジレンマは誰もが望まない皮肉な結果となった。それでも課題は完全に消え去ったわけではない。新たな中盤の最適解を見つけ出すには一定の試行錯誤が必要になってくる。

 

 試行錯誤で練りだした中盤の組み合わせは場合によっては機能不全に陥り、それが敗戦の原因に繋がるかもしれない。短い期間で複数の最適解を見出すには特に最初は一定の時間を要するだろう。

 

 ロジャースはマンチェスターシティ戦において新たな戦術的なアプローチで臨み、試合後には掌返しの声も含めて賞賛の声が上がったが、10月後半からは中盤の人選においても新たなアプローチが必要になってくる。ここで複数の最適解を見出せば、たとえ試合に負けたとしても「No Ndidi No Win」と呟く人間はほぼほぼ消え去るだろう。


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